すでに周知しておりますように、2013年度関西支部秋季大会は、全国大会と合同のかたちで開催いたします。
大会二日目午後は、関西支部による研究発表企画をおこないます。内容は、2013年度関西支部春季大会から始まる連続企画「文学研究における〈作家/作者〉とは何か」(全四回)の第2回となる特集です。
本特集企画への研究発表を募ります。積極的なご応募をお待ちしております。
■特集企画 拡張する〈作家/作者〉イメージと実証性のありか
■日時会場 2013年10月27日(日)/於 関西大学
■募集人数 1~2名
■応募資格 日本近代文学会関西支部の会員であること
■応募締切 2013年7月20日(土)[当日必着]
*会報第17号の日本近代文学会研究発表募集のお知らせには、明記してありませんが、応募締切は[当日必着]です。お間違えの無いようにお願いします。
■応募要領 発表題目および600字程度の要旨を封書でお送りください。必ず連絡先(住所・電話番号・メールアドレス)を明記してください。
■送り先及び問い合わせ先 :
日本近代文学会関西支部事務局
→こちらをご参照ください。
「作者の死」(R・バルト)の宣言とともに始まったテクスト論の出現から一定の期間を経て、〈作家/作者〉は、テクストから構成される概念へとその位置を移したことで、以前の役割とは異なった相貌を見せるに至った。以後、文化的研究を通して様々な方法論が試されてきたが、その都度、新たに立ち上がる〈作家/作者〉の存在があったといってよい。一方で、作品解釈の根拠を作家に求める社会的・文化的ニーズは今なお強力に存在するが、そのような磁場にとらわれない、新たな作家研究・実証研究の地平を探るべきではないだろうか。
たとえば、従来なら作家研究の枠内で捉えられるような肉筆原稿や草稿を用いた研究が、テクスト生成論の観点に基づき行われている。さらに、作家を社会的交流の場と捉え、そのサークルをテクストの基盤と見なす研究もある。サブカルチャーの世界に目を向けてみると、〈作家/作者〉の概念枠を軽やかに乗り越えた例が認められる。あるいは、特定のコミュニティとの関係においては、起源としての作家の存在を感じさせる文学館や文学碑が現在も大きな意味(オーラ)を持ち、作家ゆかりの地を積極的に活用することで、文学受容の場を活性化させる役割を果たすものと見なすことができよう。こうした視点で近代文学史も再点検してみれば、従来の〈作家/作者〉像が修正を迫られる場合もあるのではないだろうか。
目指すべきは、作家の存在を作品解釈において最終的に到達する目標とするのではなく、作家という指標の向こうに何があるかを明らかにすることだ。これまで行われてきた研究成果をふまえ、今日的な問題意識をあらためて重ね合わせてみたい。本特集では、新たに視野を広げた中で見えてくる〈作家/作者〉のイメージと、作家を中心とする実証研究の価値の再検討をはかり、その方法論を現在の近代文学研究の中に位置づけることを企図する。
なお、関西支部では、2013年度春季支部大会より連続企画「文学研究における〈作家/作者〉とは何か」(全4回)に取り組んでおり、春季関西支部大会でシンポジウムを行ったところである。本特集はその第2回目にあたるが、これ自体で独立した企画としても成立するものであることをおことわりしておきたい。