2014年度 関西支部秋季大会小特集企画趣旨

【小特集企画】教室の中の〈作家/作者〉

趣旨
 関西支部では二〇一三年より連続企画として、「文学研究における<作家/作者>とは何か」について議論を重ねてきたが、このテーマと隣接する問題として最後に考えたいのは、教室のなかで<作家/作者>がどのように扱われているかである。
 テクスト論以降の文学研究においては、<作家/作者> の問い直しがされて久しい。では、現在の中・高の国語の授業では、一体どのように<作家/作者>が扱われているのだろう。たとえば、文学教材を<作家/作者>が発信したメッセージと捉え、「作者の言いたいこと」を正確に読み取るという学習課題は、現在も設定されているのだろうか。一方、「言語活動の充実」が『学習指導要領』にうたわれる中で、文学教材をオープン・エンドな形で話し合う議論の材料=場と意味づけた授業もあるだろう。この教室には、もはや<作家/作者>は存在しないのではないかとの思いも浮かぶ。
 また、本企画では、文学研究と国語教育の差異や連続性にも目を向けたい。そこでは、解釈の多様性という文学研究が目指してきた方法論と、国語教育における「正解到達主義批判」や「読者論」の影響を視野に収めた議論が必要となるだろう。
 教室における<作家/作者>の扱われ方とそれを取り囲むイデオロギーの問題は、<作家/作者>の神話性について考える上でも重要な示唆を与えてくれるはずである。そうした問題も踏まえて、<作家/作者>をめぐって議論してきた本連続企画をまとめてみたい。

 近年、文学研究の場と中・高の教育現場との距離が遠くなったように感じられる。国語教育に文学教材が用いられている以上、両者は隣接しているはずで、文学研究者は教科書編集や指導書の執筆という形で協力を続けている。だが、両者の対話は現在どれくらいなされているのだろう。関西支部では本特集を発端として、大学の研究と中・高の教育との差異を再確認しつつ、両者が応答し合うことにより、関係の再構築をめざしていきたい。