【小特集企画】教室の中の〈作家/作者〉
■趣旨
関西支部では二〇一三年より連続企画として、「文学研究における<作家/作者>とは何か」について議論を重ねてきたが、このテーマと隣接する問題として最後に考えたいのは、教室のなかで<作家/作者>がどのように扱われているかである。
テクスト論以降の文学研究においては、<作家/作者> の問い直しがされて久しい。では、現在の中・高の国語の授業では、一体どのように<作家/作者>が扱われているのだろう。たとえば、文学教材を<作家/作者>が発信したメッセージと捉え、「作者の言いたいこと」を正確に読み取るという学習課題は、現在も設定されているのだろうか。一方、「言語活動の充実」が『学習指導要領』にうたわれる中で、文学教材をオープン・エンドな形で話し合う議論の材料=場と意味づけた授業もあるだろう。この教室には、もはや<作家/作者>は存在しないのではないかとの思いも浮かぶ。
また、本企画では、文学研究と国語教育の差異や連続性にも目を向けたい。そこでは、解釈の多様性という文学研究が目指してきた方法論と、国語教育における「正解到達主義批判」や「読者論」の影響を視野に収めた議論が必要となるだろう。
教室における<作家/作者>の扱われ方とそれを取り囲むイデオロギーの問題は、<作家/作者>の神話性について考える上でも重要な示唆を与えてくれるはずである。そうした問題も踏まえて、<作家/作者>をめぐって議論してきた本連続企画をまとめてみたい。
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近年、文学研究の場と中・高の教育現場との距離が遠くなったように感じられる。国語教育に文学教材が用いられている以上、両者は隣接しているはずで、文学研究者は教科書編集や指導書の執筆という形で協力を続けている。だが、両者の対話は現在どれくらいなされているのだろう。関西支部では本特集を発端として、大学の研究と中・高の教育との差異を再確認しつつ、両者が応答し合うことにより、関係の再構築をめざしていきたい。
日本近代文学関西支部では、2014年度秋季大会での自由研究発表を募集いたします。支部会委員の皆様の積極的な応募をお待ち申し上げます。
・日時会場 2014年11月1日(土)/於 京都教育大学
・募集人数 2~3名
・応募締切 2014年7月18日(金)必着
・応募要領 発表題目及び600字程度の要旨を封書でお送りください。必ず連絡先(電話番号、メールアドレス等)を明記してください。
・その他 発表時間は30分程度です。採否については、運営委員会で決定次第お知らせいたします。発表に関してご不明の点は事務局までおたずねください。
・送付及び問い合わせ先
〒631-8502
奈良市山陵町1500
奈良大学 木田隆文研究室内
日本近代文学会関西支部事務局
■日時: 2014年6月7日(土) 13時00分から18時15分
■会場: 奈良大学 C棟105教室
■内容:
・開会の辞
奈良大学 文学部長 真田 信治
自由発表
・空転する「デカデンツ」
―昭和一〇-一一年「デカダン論争」の問題圏―
福岡 弘彬(同志社大学大学院生)
・初期日本SFにおける「核」の表象
―一九六〇年代半ば~七〇年代初頭の
ショート・ショート作品を中心に―
森下 達(京都大学非常勤)
連続企画(第三回) 「文学研究における〈作家/作者〉とは何か」
司会:小川 直美/信時 哲郎
・TVアニメにおける監督の位置
―『まどか☆マギカ』における演出スタイルから―
禧美 智章(立命館大学非常勤)
・「記号としての作者」は死につつあるか?
―「実話怪談」系文庫の変遷とホラー作家―
奈良崎 英穂(プール学院大学非常勤)
・「分身」としての主人公
―さくらももこ作品における〈笑い〉の変容―
山田 夏樹(駒澤大学ほか非常勤)
・閉会の辞
日本近代文学会関西支部長 関西学院大学 大橋 毅彦
・総会
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※総会終了後、奈良大学食堂にて懇親会を開催します。会費は五〇〇〇円(学生・院生三〇〇〇円)の予定です。