2012年度春季大会 特集企画発表者募集

 日本近代文学会関西支部では、2012 年度春季大会において特集「科学と想像力」を企画しております(下記【企画趣旨】をご覧下さい)。つきましては、下記の要領で支部会員の皆様から発表を公募することといたしました。ぜひ積極的なご応募をお待ち申し上げます。
特集企画 : 科学と想像力
日時会場 : 2012年6月9日(土) / 於 大阪樟蔭女子大学
募集人数 : 2名程度
応募締切 : 2012年2月末日
応募要領 : 発表題目および600字程度の発表要旨を封書(表に「特集企画発表希望」と朱書き)でお送りください。必ず連絡先(住所・電話番号・メールアドレス等)を明記下さいますようお願い申し上げます。
 ※採否につきましては2012年3月末日までにご連絡いたします。 

送り先及び問い合わせ先 :
  日本近代文学会関西支部事務局   → こちらをご参照ください。

【 企 画 趣 旨 】  科 学 と 想 像 力

 文学と科学との積極的な交流は、近代文学をそれ以前と区別する、ひとつの明確な指標であろう。近代とは、科学の劇的な発達や機械の衝撃的な登場・進化にいろどられた時代にほかならない。映画の登場による変革と労働者搾取につながる新技術の導入と闘いのなかで機械を描出したプロレタリア文学、宮沢賢治の「シグナルとシグナレス」(1923)、文学としての映画(脚本)を模索した岸田國士「ゼンマイの戯れ」(1926)など、科学との対峙を経て積極的に取り込もうとした試みには新たな時代への期待がみなぎり、新たな見解を得て、文学が着実に進歩する動向が感じられる。
 森鷗外がマリネッティ「未来派宣言」を翻訳紹介したのは1909年のことだが、その後、機械のフォルムと性能に芸術美を見出せることや、機械が芸術の素材領域の拡大と表現の更新をもたらし得る可能性がひろく認識されるに至り、近代文学は電気や自動車、工業機械の普及を間近に眺め、飛行機やロボットの登場に刺激を受けつつ、1920年代以降、ますます活発に、機械や科学技術を文学表現の対象とし始めた。こうした傾向がプロレタリア文学やモダニズム文学にも共通して見出せることは、近代文学と科学・機械との交流を考えるうえで、おそらく一つの重要な視点を提供しているだろう。
 また、戦時下にあらわれた海野十三「火星兵団」(1941)のような軍事的空想科学小説や、「SFマガジン」創刊以後のSF小説の隆盛など、科学を基点とする想像力も無視できない。長山靖生『日本SF精神史』(2009)に、政治小説に描かれた民権思想のユートピアを一種の平行宇宙として捉える視点や、戦後SF作品と大正期以降のユーモア小説との近接が示されているように、科学と文学、および現実社会との交流は一時代に限定された一過性の現象ではなく、安部公房、星新一、小松左京などによる昭和期のSF作品をはじめ、1980年代隆盛のファンタジー、1990年代以降のサイエンスホラー、2000年代以降のライトノベルなど、文学に長らく通底するモチーフとして、時代を横断しつつ論じるべきであろう。
 タイムマシンやロボットなど、文学の想像力はしばしば科学をリードし、現実がそれを追走してきた。最先端の文明を手にしながらも、人はいまもなお、科学という現実性の窓をとおして描かれるフィクションを希求する。書き手が生み出し、読み手の脳裏に浮かんでいく科学的イマジネーションの魅力の再評価も行いたい。
 本特集では、科学をキーワードに持ち得る個別の作品分析はもちろん、ジャンルとしてのSF、あるいは文学潮流のなかに散見される機械との関係性、科学的なエンタテイメント小説など、幅広い視野・時代からの多彩なアプローチを歓迎する。大会が文学と科学の関わりを問う現場となり、新たな展望を引き出せる機会となることを期待したい。